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ゲストコラム第2弾は、
カフェ・サンプルのレギュラーイベントMOVEMENTでも
お馴染み、DJ・ミュージシャンとして活躍中の、
moanyuskyことオノユウスケさんのこだわりレコード紹介。
毎回毎回、古今東西の珍盤奇盤(もちろん名盤!)をとりあげてまいります。
第1回目は、あのクレイジーケンバンド・横山剣さんをうならせた
シンガポールのバンド「The melodians」。


「The melodians」
私はある雑居ビルの3Fに向かった。そこは心斎橋にあるアジア、アフリカ、中南米、中近東を中心とした
民族音楽、音響、そして世界各地のポップスのCD、LP、DVDが揃う「PLANTATION」というレコードショップであった。店長の丸橋さんが月に一回世界各国を周り、現地で商品の買い付けをしているのでいつも聴いたことのない快作がそろう。私は毎回その驚きを楽しみに「PLANTATION」に向かうのである。
今回紹介する「THE MELODIANS」もその驚きの一つである。
クレイジーケンバンドの剣さんも「イイネ!」と言って、
MELODIANS関連のレコードをこのお店で買って行ったそうだ。
そんなMELODIANSなのだが、正式名は「モーリス・パッドン&ザ・メロディアンズ」シンガポールの70年代のグループで、モーリス・パッドンというシンガポール人のギターリストのリーダーバンドである。まず私はジャケットにやられてしまった。ジャケットの彼らはみな微笑している。一言で言えば「なんじゃこりゃ」である。でもこういう作品ほど聴いてみたくなるものである。
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まず第1音。ホワイトノイズと共にリズムボックスのチープな音が聞こえてくる。その後直ぐにチープなオルガンの音が追ってくる。このオルガンのメロディーがまたオリエンタルでマーティン・デニーな香もするのだけれど、マーティン・デニーよりも開放感があり、あの時代の上品な雰囲気はない。かと言って初期の細野晴臣の様な絶妙な雑ざりかたもしていないし、あの異国感はここにはない。ただなんだか、湿っぽいのである。
次にモーリス・パッドンのギターのメロディーが入ってくるのだが、このギターの使い方が個性的で面白い。リバーブにたっぷりと漬かったギターがテケテケ言いながらオリエンタルなメロディーを奏でる。かと思えば、その時代特有のサイケデリックで実験性豊かな新鮮な音が広がるのである。特に面白いのがただ西洋の音楽を真似ているのではなくメロディーはあくまでその地域に根差した昔ながらの変わらぬメロディーだという事だ。だからこそ独自のオリジナリティーがここには存在するのである。気付けばギターの高音が私の脳天を突き抜いていた。もう一人の自分がぶっ倒れているのを見たような気がした。
B面の曲に関してはまるで黄泉の国の様な独特のマッタリテンポにポール・デルボーの様な静けさがあり、微かに聞こえるホワイトノイズがやはりスコールに聞こえてくるのである。dubを聴くよりもこちらの方がいくらか遠くに飛ばしてくれる。明らかにdubよりダビィーでスモーキーな空間を作りだしている。
ちょうどこの70年代はシンガポールに本格的に英語が国レベルで導入された時代らしく、
彼らもそのためか、昔ながらのシンガポールの歌謡曲を英語バージョンで演奏していたり、
シンガポールの大衆音楽の歌手のバックを勤めたりと幅広く活躍していたらしいのだ。
私は彼らがバックを勤めたサイモンJr.という大衆音楽の歌手の作品も聴かせて頂いたのだが、
またこれもジャンキーなギターサウンドが冴え渡る名作である。
霧深いスモークの中レコードが終わり、ザー、ザーと私を呼んでいた。結局、私はメロディアンズの無国籍歌謡に夢中になり、その日に二枚購入して、あのスコールが忘れられなくなっていたのか次の日にもう一度「PLANTATION」に行き、もう一枚彼らのレコードを購入していた。
この黒い円盤は今までシンガポールの空気、質感のすべてを何十年も吸い続けて、からからに干からびて、私のところにやってきたのである。私が針を落としたとたん、円盤は喜んだのか、溝の隅々から水滴を垂らし始めるのである。その水滴が円盤の回転の力で部屋中、頭の中、街の至る所に飛んでいき、煙のように異国の緊張感と共に広がっていくのである。
私は今日もメロディアンズを聴きながら、小さな窓から変わりつつある街を眺めている。


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