＜プレスリリースより抜粋＞
甲斐すみ子は、37才の時に単身フランスに渡り、それまでの10年近くに及ぶイラストレーター兼木版画家としてのキャリアを捨て、知人や友人の全くいない未知の場所で、将来への確信も自信も無いままに暮らしはじめた。
フランス語を習得した後、トウルーズとマルセイユの二つの美術学校を６年かけて修了し、2000年から現在に至るまでパリを拠点に造形作家・写真家として活動を続けている。
甲斐の人柄は、人知れず咲いた野の花のようであり、純粋で無垢で何にも汚されていない雰囲気を持っている。その彼女が作った花の靴の作品群は、可愛らしい形と鮮やかな色で、見る人を即座に惹き付ける。また、まるでそこにその靴そのものが存在するような、精巧なプリントも非常に美しい。
しかし、一見可愛く純粋で美しいものが往々にして残酷な一面を持ち合わせている様に、これらの作品の裏には底知れぬ不穏ななにかが潜んでいるように感じる。
靴に象徴される出口の無い袋小路、花に象徴される一瞬に移ろう若さ。そこからは甲斐の作品が持つダークな側面が見えてくる。
どんなに情熱を傾けて作ったものでも、他人から見れば無用の長物になりかねない。
作って作って作り続けたら、いつか作品が虚しい心を満たしてくれる、でもそれは幻想に過ぎない。
そんな不安に苛まれながらも、彼女は今日も花の靴を作り、シャッターを切る。
Gallery OUT of PLACE
甲斐すみ子写真展 「ハナクツ」
会期：２００５年９月１日〜１０月９日
１２：００〜１９：００
休廊日：月・火・水
tel/fax 0742-26-1001
URL www.outofplace.jp
e-mail contact@outofplace.jp
