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世界の絵本を販売するインターネット古書店パビリオンブックスは、ただいまGallery OUT of PLACEとなりの古い家屋を改装作業中。完成すれば絵本の販売と喫茶営業を行う素敵なお店が誕生します!
リアルタイムで改築が進む手作りショップからお届けするパビリオン隊長による好評連載コラム、第5回目は、隊長、屋根にハマります。


5.「屋根を葺く」
図書館で借りた『屋根』という本を読破した直後から、ぼくの目には世界がちがって見えました。大げさなようですが、本当です。
なんて面白いんだ、屋根!近所を散歩していても「切妻」「寄棟」「入母屋」…とその形状が気にかかり、「瓦」「スレート」「金属」…とその材質に着目し、勾配や、果てはそれが作られた年代にまで想い及ばずにはいられなくなってしまいました。友人に会えば「いま屋根にハマっててね…」と語り始め、奇妙な顔をされる始末。しかしそこらじゅうにある屋根のことを、今まで何十年も実は何にも知らずに眺めていたのです。いや、見ているようで何も見ていなかったのです!そのことに気付いて愕然としました。
そんなわけで、屋根だけでコラム10話くらい書けそう…だけどさすがにそういうわけにもいきませんね(工事と同様にどんどん進行が遅れてしまいそう…)。

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わが古家はともかくまず屋根の修理が急務でした。雨漏りする箇所の天井を剥ぐと、見事に青空が見える有り様。季節は4月、ぐずぐずしていると梅雨に入ってしまいます。最初は屋根も自分で…と内心考えましたが、「屋根だけは危ないので登ってくれるな」という家族の強い要請に屈服せざるを得ず、工務店に相談することにしました。
でもこれについては心残りはありません。実際に工事を見ていましたが、とても一人でできる作業ではなかったので!(大工さんでさえ傷んだ野地板を踏み抜き、2度も転落未遂を起こした!)
本職の仕事は何から何まで、目を皿のようにして観察していました。もちろん施主がずっと現場にいると大工さんたちもやりづらいでしょうから、邪魔にならないように表の掃除をしたりしながら遠慮がちに(でも密着)。古い瓦をめくるとその下からは葺き土(昔は瓦の固定と断熱を兼ね土が盛られていた)が現れ、大量の土を取り除くと今度は杉皮の下地が現れ、それらを巻取ってしまうと頼りない荒材の野地板が太陽に晒され、薄暗かった屋内にサンサンと陽が降り注ぎました。その爽快ことといったら!明るいっていいなぁ、このまま屋根無しでいこうかな!?なんて。いや、でも一瞬ホントに思ったほどです。青空カフェでもいいなぁ、とか何とか。
しかしそんな呑気なことも言ってられません。大工さんたちはさっそく野地板の修復と不陸直しに取り掛かります。不陸とは凸凹のことで、長年の風雪による歪みをできるだけ平面に戻すのです。瓦屋根だと多少の不陸はごまかしが利くのですが、新しい葺き材はガルバニウムという薄い金属板で、そのままだと葺きづらい上に見栄えが悪くなってしまうためです。大工さんがもっとも苦心した工程でしたが、両手に電動工具を持ちながら屋根の上を縦横に働き回る様子も壮観でした。休憩時間にはお茶菓子を差し入れつつ、工具選びのコツや使い方を教えてもらうのも忘れずに。
そして一週間後、屋根はピカピカの新品に見事生まれ変わりました。新しく付けた2か所の天窓からはまぶしい自然光が注ぎ、もう昼間から電灯を点ける必要はなさそうでした。何もかも順調、に思えたのも束の間…。実はこの‘不陸’こそが、気楽なはずの改装工事を大掛かりな大改修工事へと変貌させる重大なシグナルだったのです。
(パビリオン隊長)

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